小笠原のウミガメについて
今回は、小笠原諸島のウミガメ料理について話したいと思います。
ウミガメは、近年の環境破壊によって数が減少しているため、日本国内の殆どの場所では、食べることはもちろん捕獲自体が禁じられています。ということで、普通の場所ではウミガメを食べることはおろか、捕まえたり傷つけたりするだけで警察の御用になります。
しかし、小笠原諸島は、ウミガメの重要な回遊地として盛んに保護活動が行われている一方で、ウミガメを食べる伝統的な文化を継承するため、厳しい捕獲制限が課されながらも漁は現在でも行われています。
ということで、小笠原は日本で数少ない「ウミガメ食」を体験できる場所としてマニアの間でひそかに有名になっています。

信じられないようですが、小笠原ではウミガメ料理が名物で取り扱っている飲食店やお土産店はいくつも存在します。
このように、小笠原諸島ではいろいろな側面からウミガメが名物となっているので、本題に入る前に、まずはウミガメについて解説していきたいと思います。
アオウミガメの繁殖地・小笠原
日本に生息するウミガメは数種類知られていますが、小笠原の海で一般的に見られるのはアオウミガメです。
アオウミガメは、餌を食べる場所と繁殖地の間を回遊することが知られており、基本的には太平洋側の南日本全域に広く生息していますが、交尾や産卵を行う場所は、小笠原を初めとした一部の地域に限られています。

このように小笠原は繁殖のためウミガメの集まる場所として世界的にも大変貴重であり、繁殖期の3月~5月になると島にある多くの砂浜で産卵が行われます。
小笠原海洋センター
小笠原海洋センターは、小笠原の野生の動物を保護するために1982年に開設され、特にウミガメの調査や保全を行っていることでも有名です。怪我したウミガメの保護や、子カメの孵化や放流活動に尽力しており、その甲斐あってか小笠原のウミガメの個体数は徐々に回復傾向にあるそうです。施設は一般公開されており、館内の水槽では生まれたばかりの子ガメが数百匹飼育されています。

小笠原海洋センターは入場無料のうえ、二見港から車でわずか5分ほどの製氷海岸の近くにあるので必見です。
ウミガメ食の文化
ウミガメを食べると聞くと、抵抗感を覚える方も多いと思いますが、ウミガメ漁はかつて世界中で行われ、海の貴重なタンパク源として認識されていました。また、外洋で調達できるほぼ唯一の食材であることから、これまでに多くの遭難者の命を救ってきました。(ウミガメのスープという推理ゲームで、ウミガメの肉の話が出てくるのは以上のような背景があるからです)
小笠原では、かつては年間3000匹ものアオウミガメが捕獲されていたそうなのですが、回遊する数が徐々に減ってきたことから、現在では100頭前後の捕獲制限と禁漁時期を設けて、ウミガメ保護と食文化の両立を達成しようとしています。
現在でもウミガメ食が残っており、地元の飲食店でカメ肉が普通に提供されているのは全国でも小笠原だけなので、この地を訪れた際は、是非食べておきたい珍味です。
ウミガメ料理について
小笠原でウミガメの捕獲が許可されている時期は、3月~5月に限られているため、多くの店は、カメ専門の漁師から1年に1回買い出しを行って、翌年の解禁日まで冷凍保存をしています。
そのため、美味しいカメ肉を食べたいのであれば、新カメの入荷する春先に小笠原に行くのがベストです。
肝心の味ですが、独特の臭いやクセといったものは無く、とても美味しかったです。例えるならば、馬刺しをあっさりさせたような感じでした。(カメ肉を食べた多くの人が馬刺しに似ていると言うそうです)
ウミガメ料理は、小笠原にある複数の飲食店や土産物屋で名物として販売されていますが、その中でも私が実際に行ったおすすめの店を2カ所紹介します
うわべ家
うわべ家は、二見港からすぐ近くの父島字東町に位置しており、昼は弁当屋、夜は和風居酒屋として営業している飲食店です。ここでは、夜の時間帯にカメの刺身や寿司、煮物が提供されています。

カメの他にも、島寿司や地魚の唐揚げ、アルコール類ではパッションサワーやマンゴーサワーなど、小笠原名物の料理が提供されているためおすすめです。
洋風居酒屋CHARA
洋風居酒屋CHARAは、こちらも中心地の父島字東町にある飲食店です。
この店はなんと言っても品揃えがよく、島の食材をふんだんに使った料理や酒が味わえます。

ここでは、ウミガメの煮込みや刺身などが食べられますが、特におすすめなのがウミガメのアヒージョです。煮込んだカメ肉とオリーブオイルが意外にも相性が良く、小笠原一番の絶品でした。
ちなみに、小笠原父島の飲食店&土産物店の多くは父島東町と西町に固まって位置しています。父島丸が着岸する二見港からすぐの徒歩圏内にあり、30分ほどで一周できるのでウミガメ料理屋を何軒も巡るのもいいと思います。
コメント